中国では、2016年1月に約35年続いた一人っ子政策が撤廃され、すべての夫婦に二人目まで子を持つことを許されるようになしました。ますますマタニティ・ベビー用品市場の活性化に拍車がかかって来ているのですが、実際の数字的なところではどうなのでしょうか?
ここでは、中国のマタニティ・ベビー用品市場の現実を12の数字で紹介したいと思います。
43兆円の中国マタニティ・ベビー用品市場
2017年、中国のマタニティ・ベビー用品市場規模は2兆7千億元(約43兆円)と予測され、毎年300億元(約4800億円)超えの成長スピードとなっています。日本の同市場規模は、2012年頃のデータですが約12兆円で、おそらく2017年の今もそれほど激増も激減もしていないことだと思います。中国のマタニティ・ベビー用品市場の規模の大きさはもちろん、今後の発展拡大にも期待ができます。
中国のマタニティ・ベビー用品市場は、既にブランドが途轍もなく多く存在し、競争が激しい市場となっています。消費者は、妊娠からマタニティ用品に関心を持ち始め、出産、授乳期までずっとマタニティ・ベビー関連商品を購入し続けることになります。中国では日本に比べ、いったん1つのブランドを受け入れれば、そのブランド商品を買い続ける傾向にあり、後半の育児期間においてもユーザー需要は継続しやすいです。ユーザーロイヤリティの高い市場であると考えることが出来ます。
マタニティ・ベビー用品ブランドにとって重要なことは、まず消費者が最初に選ぶマタニティ・ベビー用品ブランドになることです。このファーストタッチの際に与えるブランドイメージが重要になります。その後は、インフルエンサー(KOL)や専門家による口コミ・評価などをマーケティングに活用し、Wechatなどで任意のグループを構成しその中でコミュニケーションをとりながらユーザーの信頼度を高めていきます。先行の顧客が次の新規顧客を生み出すマーケティング手法をとり、顧客には自発的にブランドを広めてもらえるような仕組みづくりをしていきます。
8割以上の買い物がモバイル端末からという事実
マタニティ・ベビー用品のモバイル端末での購入割合は、2015年の第1四半期から2016年同期までの間に、57%から83%まで上昇しました。いまやマタニティ・ベビー用品のネット購入のうち、8割以上がモバイル端末からの購入です。
各ルートの割合から見ると、マタニティ・ベビー用品市場は最も早くモバイルEC時代に入った市場と言っても過言ではありません。モバイルECが主流となる分野では、ある程度消費者の情報接点が標準化されてきます。例えば、ECアプリ内の口コミだったり、Wechat内でのモーメンツだったり、比較的シンプルに情報流通の経路を設計していくことができます。また、DSPなどを活用した広告コンテンツの最適化も自動で行うことができます。いかにアプリ内口コミやWechat、DSPなどをうまく活用するかがポイントになってきます。
口コミの影響力が極めて強いマタニティ・ベビー用品市場
良いと思った商品については、84.6%の母親達が自発的に他の人に口コミをしているようです。逆に悪いと思った商品に出遭った場合、84.1%の母親達が友人やWechatのモーメンツでダメだしをするなどネガティブな口コミを行っています。
消費者はその商品の良し悪しについてオンラインのコミュニティ内で自発的に評価をしています。例えば、Wechatにはマタニティ・ベビー系のグループが多数存在し、そのグループ内でどの商品が使いやすかった等の情報のやりとりが非常に活発です。またターゲット消費者のモーメンツにも多くの育児情報などが流れており、それらを参考にすることも日常茶飯事です。データによると、とあるマタニティ・ベビー関連の商品情報がシェアされてきた場合、約45%の人たちがその内容について興味を持ち何らかのアクション(いいねや再シェア)をし議論しています。またそのシェア情報が誰かの商品購入情報だった場合、約34%の人たちはその購入に触発されて同じ商品を買っています。また約28%の人たちは、その買った商品についてレポートをしています。
かなりの割合で消費者は口コミ情報を頼りにし、それに触発され同じ商品を買う構造ができあがっていることが分かります。このような情報伝播の内容は、PGC(いわゆる自社制作コンテンツ:Professionally Generated Content)とUGC(いわゆるユーザー制作コンテンツ、投稿や口コミ、評価など:User Generated Content)の使い分け、統合が非常に重要であり、PGCだけに寄り過ぎても、UGCだけになっても、消費者からの支持を得ることは出来ません。またPGCとUGCの統合に、KOLや消費者の中でもロイヤリティの高いユーザーに協力を仰ぎ、口コミマーケティングに巻き込んでいくことも重要です。
ユーザーの若年化が進む
中国のマタニティ・ベビー用品市場では、26~35歳の消費者が54%を占めています。また注目すべきは、36歳以上の消費者は減少傾向にある一方で、19~25歳の消費者が増加してきており、全体的に若年化が進んでいることがわかります。
若年層には、個性的な商品が受け入れられやすいです。 例えばCOMOTOMOの哺乳瓶は、定価で200元以上するハイエンドブランドですが、販売開始より5年で年間2億元の売上を達成しています。シリコンで出来た商品は柔らかく、革新的な設計であったことからも若い母親たちから絶大な支持を集めた要因となりました。
田舎に行けば行くほど商品は女性が購入している
マタニティ・ベビー用品の女性消費者の割合は、一線都市(北京市、上海市、広州市、天津市、深セン市)では71.05%、逆にもっとも発展途上である六線都市では79.50%となっています。
都市の階級が下がれば下がるほど、女性消費者の割合が増加する傾向にあります。販路拡大、PRやプロモーション企画を考える際に考慮すべき要素となるかと思います。
四線都市の海外製粉ミルクの購入をどう見るか
淘宝全球購(タオバオ越境EC)において、海外製粉ミルクの売上のうち約10.1%が四線都市のユーザーによるもので、最も大きいシェアを占めています。次に続くのが二線都市であり、その差は0.7%となっています。
淘宝全球購の海外製粉ミルクの売上金額から見ると、四線都市が最も大きく、また五線都市も急速に上昇してきています。五線都市は一線都市を抜き第3位となっています。このような四、五線都市からの売上金額の増長は、越境ECの発展による、小さい町の消費者でも適正な価格で品質の高い海外製粉ミルクが買えるようになったことに起因していることが予測できます。購入チャネルとしてもっとも身近になりつつあるのでしょう。逆に一線都市には越境EC以外にも購入チャネルが多数あることから、購入ルートの分散化が進んでいると見られます。
コミュニティやアプリでのコミュニケーションが活発
中国のマタニティ・ベビー関連のコミュニティアプリのユーザー数は約1566万人で、1人当たり1日約11回のアプリ起動をしています。1人当たり1日の使用時間が約25分で、ユーザーの顧客浸透率は1.76%となっています。※顧客浸透率=顧客数/ターゲット数×100
このようなマタニティ・ベビー関連の総合コミュニティアプリでは、妊娠や育児を入口として、その後、健康医療、家族旅行、教育、EC物販、地元O2Oサービスなどの関連分野に派生した形でビジネスが構築されています。モバイル端末が優勢なマタニティ・ベビー業界では、総合的なEC・情報プラットフォームとの相性が良くなり、ユーザーのロイヤリティ醸成がやりやすい環境でもあります。
ユーザーの活動時間帯のピークは何時頃か
マタニティ・ベビー関連のECユーザーが活動のピークを向かえるのは午前10~11時、そして就寝前のの20時~21時頃となっています。
マタニティ・ベビー関連のモバイルコミュニティのユーザーの活躍時間帯が比較的均一分布しています。その中でも、20時~22時の時間帯に最もユーザーが集中します。マタニティ・ベビー関連のアプリユーザーの活躍時間帯も比較的均一分布しており、20時~21時がユーザーが最も集中する時間帯となっています。
情報の質こそが最重要ファクターとなる中国のマタニティ・ベビー関連プラットフォーム
マタニティ・ベビー関連のECプラットフォームを選ぶ際、41.6%のユーザーが「情報の質」を重視して選んでいます。
情報の質は、ユーザーがマタニティ・ベビー関連のECプラットフォームを選ぶ際に最も重要なもののひとつであるようです。その他に重要な項目としてあがっているものに、ユーザー数(27.5%)やマタニティ・ベビー用品の仕入れルートの信頼性(23.9%)が上がっています。 マタニティ・ベビー関連ブランドは、出産育児の知識や知恵と商品プロモーションをうまく融合し、消費者の信頼を高めながら商品セールスを実施していくことが求められます。
オフラインとオンラインの融合による販売戦略を
50%のユーザーが、マタニティ・ベビー用品を購入する際に、オフラインによる購入も検討します。
オンラインとオフラインの融合で消費活動をシームレスに行うように設計することで、消費者の動向や消費者の要求に対して、より正確な理解と予測をすることができます。データ分析を行うことで消費者のペルソナを描くことができ、さらなる販売促進策を計画実行することが出来ます。
より安心で安全なものを求める消費者心理は万国共通
86%のユーザーは、赤ちゃんのためであればより安全で健康な商品を買うために想定以上の余分な出費も厭わないことが数字で出ています。これは中国であれ、日本であれ、子供には良いものを与えたい親の気持ちを反映しているようですね。
また、66%のユーザーは高品質な商品を買うと良い気分になり満足感が増すと答えています。さらに、62%のユーザーは高品質な商品を購入すると自信が持てると回答しています。どんな時でも、良い品質はマーケティング成功の鍵となります。良い品質は人々の口コミによる情報拡散の動力となります。逆に言うといったん品質問題が起こるとその口コミ伝播のチェーンはたやすく切れてしまい、これまでのマーケティング努力が水の泡となりかねません。
女性経済の発展が先導する女性中心のベビー用品選び
夫婦でベビー用品を選ぶ際に、89.7%は母親が決定しています。また大卒以上の母親が85%です。
「女性経済」が発展してきた結果、彼女達はより科学に基づいた育児法を求め、自分自身で学習をし、子供に良いものを自分達で判断できるようになっています。大切なことは、このような女性像をきっちりとペルソナとして描き出し、このペルソナに基づいたコミュニケーションを綿密に設計していくことです。ペルソナ、商品の特徴、情報接点など違った視点からインタラクティブなコミュニケーションをとっていくことがポイントになってきます。
マタニティ・ベビー用品も消費者権利保護デーの標的に
今年の3月15日、中国の消費者権利保護の日では、食品系の日本メーカーが標的となり、カルビーや日清など、さまざまな大手越境ECプラットフォームから姿を消しました。(※ご存知ない方は必ず読んで頂きたい記事です→【3月15日】消費者権利デーという中国リスク。越境ECから日本輸入食品が消える日)
しかし、315の打撃を受けたのは食品業界だけではありません。オムツやベビー服などのマタニティ・ベビー用品業界でも検査対象となった商品が多かったようで、やはり参入する際はこのようなリスクに対する対策も充分に考えておく必要がありそうです。
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