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【中国小売業界】スーパーマーケットチェーンのオムニチャネル化が急加速する理由

【中国小売業界】スーパーマーケットチェーンのオムニチャネル化が急加速する理由
中国のスーパーマーケット業界でオムニチャネル化が加速しています。中でも「盒馬鮮生(ハーマーシェンシャン)」、「超級物種(チャオジユージョン)」という食品スーパーが好調で注目を集めています。

盒馬鮮生とはどのような食品スーパーか?


盒馬鮮生とは上海発の食品スーパーチェーンであり、アリババから1.5億ドルの出資を受けています。

一般的な小売機能を備えつつ、消費者は自分で選んだ食材をその場で調理してもらうこともできます。手にとった海産物や野菜を調理スタッフに渡せば、味付け等をして料理にしてもらうこともできます。

実店舗での購入だけでなく、盒馬鮮生アプリを使えばアプリ内でお買い物をすることもできます。盒馬鮮生の最大の特徴は、超時短の宅配サービスです。お店から3km以内であれば30分以内に購入商品が届きます。

超級物種が人気の理由


超級物種は福建省の企業、永輝超市(ヨンフェチャオスン)が運営する実店舗型の全く新しい小売チェーンです。ちなみに「超市」とはスーパーとコンビニの融合店舗を表すような言葉です。

超級物種はスーパーでありながら、飲食店でもあると言っても過言ではありません。日本でいう市場のようなイメージに近いところです。盒馬鮮生と同様に、食材購入だけでなく、その場で調理をお願いすることも可能です。さらにはイートインスペースもあり、その場で新鮮な食材で作られた料理をすぐ楽しむこともできます。魚がさばかれるところや炒め物の火柱が立つところなどを見ることができ、非常にライブ感のあるお買い物ができます。しかも、一般的なスーパーより品揃えが豊富で安く、すべての商品が当日販売で新鮮さ消費者の心をつかみます。

また超級物種のお店の中には、择物工房(ザウークーファ)というコーナーもあります。これは日本で言うLOFTのような売り場をイメージして下さい。若者をターゲットに、オシャレな雑貨や小物、流行のおもちゃ、最新のVR機器などを取り揃え、話題性のある品揃えで消費者をひきつけています。

中国、スーパーマーケット

中国のスーパーマーケット業界が急激な成長を続ける理由とは?


盒馬鮮生や超級物種のように、中国のスーパーマーケット業界は今急激な成長過程の中にあり、今後も益々発展していくことが予測されます。これには、以下のような3つの背景があると考えられます。

1.中国政府の意向
インターネット(電子商取引)の発展により、実店舗をもつスーパーマーケット企業の存続に危機を感じた中国政府は2016年11月11日、彼らに対して下記のような方針を発表しました。

「商機を見出すために時代の潮流を読むべき。中国の小売業界は現状、各自業者が各々に自社方針に基づいてビジネスを展開しているが、これからは新しいインフラの上で各社が融合的に事業を実施していくべきである。昨今、最も大きな時代の潮流としてEC展開があげられる。実店舗チェーンはオンライン化を進めることだ。また、これからの小売業界は、シェアリング経済、共栄経済、利他原則、消費の多様化、ソーシャル化、O2Oをキーワードにビジネスを進めていくべきだ。これはひいては次世代の大きな利益にもつながる。」

2.オムニチャネル化
これまで中国のスーパーでは先述のようなライブ感やエンタメ性はさほどなく、オンラインショッピングの利用もマイノリティでした。しかしながら、現在では顧客との接点を実店舗での商品購入だけに留めず、調理をすること、イートインができること、さらにはO2O、ソーシャル展開など、あらゆる場面で顧客接点を増やし、顧客満足度をあげていくことで、これまでにないスーパーマーケットの新しい価値を提供し始めています。

上海にいる筆者の友人、陳さんは盒馬鮮生アプリの愛用者です。とある日、夕飯を作る際に生姜が切れてしまい、盒馬鮮生アプリですぐ購入。盒馬鮮生アプリなら大雨であれ大雪であれ30分以内に必ず届きます。1回あたりの最低注文金額も小額で、規定の30分以内に届かなければ完全無料となるのです。

時に圧倒的な利便性を提供し、時に食における楽しいひと時を演出してくれるスーパーマーケットが消費者の心をつかむのです。

3.価格競争力
巨大チェーンであるためコストメリットを消費者に提供することができます。また新鮮な食材を自ら選び、従来の飲食店より安い価格でその場で美味しい料理を楽しむことができるのも人気の秘訣でしょう。

このように政府意向がバックアップした形でO2O化はもちろんのこと、あらゆる顧客接点を活用し売上拡大を図るオムニチャネル化が加速しています。一方でこのような急拡大路線は中国にありがちな資本先行のスタイルであることも否定できません。すべてが資本ありきの体力勝負となり、価格競争や安易なスピード競争になりかねません。顧客思考がないがしろにされ、消費者が本当に求める価値の創出が生まれないまま、大規模以下の質の高い中小供給プレイヤーが敗北していく可能性が充分に考えられます。さて、果たしてこのような構図は、中国の小売業界にとって吉とでるのでしょうか、それとも凶とでるのでしょうか。

 

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