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コロナウイルスに勝ちぬく!?「中国露店エコノミー」の話

コロナウイルスに勝ちぬく!?「中国露店エコノミー」の話

最近、中国の「露店」は急速に注目され始めています。その原始的な商売方式が今の時代にまた脚光を浴び始めた理由は昨今の中国社会に数多くの“異変” が起きたからです。


今年2月から、武漢のある幼稚園は新型コロナウイルスの影響で3ヶ月の間閉園となりました。しかし、静まり返った幼稚園の運動場を利用してバーベキューが行われました。その後、吉林省では幼稚園に務めている先生たちが肉まんを作り屋台で販売し、一日最大700個を売り上げました。さらに、一晩で20,000円程の売り上げを出している販売者もいるため、この「露店」という経済方式の魅力を再実感させられました。中国の露店エコノミー


それらのニュースはたびたび中国メディアで報じられ、いままで全国でおよそ3000万人が露店に出店しています。販売されているものは中国でよく知られている臭豆腐、ザリガニ、タピオカミルクティーなどの軽食だけではなく、洋服、アクセサリー、自分の手作り作品、中古のブランド品なども露天の店先に並んでいます。大規模な露店街になってくると街の景観を損ねるため、都市の管理組織に取締り強化を求める声も上がってきました。中国政府はこの社会現象を静観していましたが、どうのような対応をしたのかについて説明いたします。


実は今年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界の経済秩序は打撃を受け、失業者は大量に増えてきました。それを背景として、中国は5月下旬から「露店エコノミー」という解決策で国民の失業や収入問題を有効的に緩和させ、わずか数日間の間に何十万の雇用を生み出し世界中で話題となっていました。


5月28日、中国の首相李克強は全国人民大会の閉幕後の記者会見で“雇用制度を安定させて国民の生活を守るために、「露店経済」の導入は中国経済を復旧させる代表的な手段だ”と発表しました。李首相は今の中国政府に対して「露店経済」が課題の解決策として最も重要だと強調した上、特に四川省成都市に3月から公道に露店政策を導入したことで、僅か2ヶ月の間に10万人の就職問題を解決したことを成功事例として称賛しました。


そもそも中国の露店は原始的な商売方式として中国各地に存在しているものです。しかし、普通の店舗より、騒音、食の安全性、都市環境を悪化させるなどの総合的な問題で常に禁止され、さらに追い払う対象となっていました。ところが、5月28日の全国人民大会がきっかけとなって中国当局の方針は大きく変わりました。それによって様々な事柄が変更されました。例えば、最も話題となっている“おもしろい変化”は、都市管理に関与する「城管(都市管理者)」という人たちは本来露店販売者を追い払う役柄でしたが、今は逆に、城管は販売者の人たちに電話して、露店許可の招待を出す担当となっています。 


その後、四川省成都市を始めとして、南京、武漢、河南鄭州,青岛,様々な都市が露店政策を実施しています。国民もそれが奨励されている制度だと認識し始め、積極的に参加してきています。各地方は各自の状況に合わせて適切な措置を取り、きちんとブースで分けて出店しています。また、「露店経済」の活力を最大限に発揮出来るように、参加基準、経営資格、商品の市場進出の手続きなど規制を次々と設定し、「露店経済」と販売者に合法的な繋がりを与えるように対応してきています。


とはいえ、これまで露店に出店していた人たちはそのまま変化はなく、新たに参入した人たちはただ商品を販売するといった小さなビジネスだとも言われています。多くの人たちは、このような活動で本当に中国経済の回復に強く貢献出来るのかと疑問を抱いています。中国の露店経済


今回の「露店エコノミー」政策に対して、中国の有名企業たちも露店経済の方針転換を受け直ちに参入してきています。


例えば、5月29日、中国のインターネット大手のアリババ・グループ・ホールディングス(Alibaba/阿里巴巴)は即参入し、露店販売者たちに向けて商品仕入れなどで700億人民元、約一兆円の奨励策として売掛枠を打ち出しています。しかも、3000万人を超えた露天商に対してすべて無利息でサポートし、一つの露店に付き、最大200万人民元、約3000万円の仕入れ枠を提供して支援します。さらに、アリババグループのビッグデータを活用することもでき、今は露店に出店するには何を仕入れたほうがいいのか、何が一番人気なのかなど情報を簡単に入手することが出来ます。


その後、6月2日、アリババ・グループと一緒に中国の2大インターネット企業と言われるテンセント(Tencent/騰訊)も5000万人の販売者に対して屋台でもスマホのQRコード決済が可能なサービスを提供し始めました。また、Webサービス大手の京東グループ(JD.com)も7000億円を用意して、得意の物流のサプライチェーンを露天商に提供する計画を打ち出しています。同日、中国の家電小売販売会社の蘇寧電気(SuNingグループ)も五つの支援施策からなる「夜市パートナー」計画を直ちに発表しました。


一つ目は、全国に「当日配」というサービスを供給し、1000億人民元、約1.5兆円の商品在庫を当日に全国の露店へ配達可能という体制を整えました。お土産でも、雑貨でも、生鮮食品でも、蘇寧SuNingグループであれば、すべて当日配達できるようになります。二つ目は、蘇寧グループの全国10,000を超える冷凍倉庫に対して、露店販売者は3キロ以内の冷蔵倉庫を無料で申込みすることができるようになりました。


三つ目は、無料で露店経営に関するライブ放送やレッスンを提供します。


四つ目は、全国の露天商に20億人民元、約300億円の支援金を供与します。


五つ目は、上記で述べたサービスを全国の政府に許可された露天商に対して全て提供します。大手企業が露店政策に参入


この露店エコノミーに参入してきたのは、小売業界、ECサイト、IT業界だけではありません。中国の車メーカー五菱汽車も直ちに参入しました。6月2日、五菱汽車は早速、移動販売車という新しい商品を打ち出しています。中型車ですが、わずか60,000人民元、約100万円未満の合理的な価格、プラス車のドアを開ければすぐ販売できるデザイン、さらに営業車、アイスクリーム販売専用車、ダイニングカー、冷蔵車など12類の車種という豊富な選択肢で、わずか3日間で1,000台も注文されました。国民もこのような車を「移動販売の神カー」と呼んでいます。五菱汽車は香港証券取引所に上場している企業ですが、6月8日までに株価がほぼ3倍になっています。今回、五菱汽車は露店エコノミーに対応するため、車の開発から製造までわずか5日で成し遂げたことは非常に評価されました、その証拠に、株価が驚異的に上昇しています。五菱汽車以外でも「露店エコノミー」の熱い波に関連するメーカーの株価はほぼ急上昇で、株式市場へ効果が波及しています。


「露店エコノミー」はコロナウイルスの感染拡大が中国経済に影響を及ぼした上で生じた緩和政策です。この時代の流れの変化に対して個人はもちろん、露店販売者や、大企業までもが参入して一気に盛り上がりをみせています。たった数日間で起きたこの恐ろしいスピード感に対し国内外の人たちは驚かされました。


これまで、専門的に露店経営をしていた人たちが出店するだけではなく、昼間の仕事を終えた人たちもより収入を増やしたいと考え露店に出店し、串焼きや、アクセサリー、軽食などさまざまなジャンルのものを販売しています。その中で、一晩で数万円ほどの利益を獲得した人もいますが、露天商になるためにわざわざ仕事を辞めたものの、ほぼ一週間掛けても利益無し状態の人もいます。そのため、民衆はより理性的に今の「露店経済」を考えて行動する必要があり、政府もこの“新たな”経済形態をさらに規範化する制度を設定しなければなりません。


新型コロナウイルスの感染拡大と緊急宣言による経済活動の収縮で就業者の減少幅が過去最大の2,070万人に達した日本でも、「露店」という形態で国民の雇用を底上げし景気を回復した上で、新しいビジネスモデルとして創出することができるのか。経済の活気と社会の秩度を両立できる経済活動は、確実にビジネス環境の正常化と経済復旧に有効だと考えられます。

 

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