旅行会社大手のJTBは23億400万円ある資本金を1億円に減資し、中小企業化することを発表しました。これは新型コロナウイルス感染拡大により旅行需要の激減が影響し、2020年度中間期決算でも損失が782億円と過去最大の赤字を計上していたことのが原因と推測されてます。
旅行業界ではJTBの他にもチムニーやANAセールスなども資本金1億円に圧縮し、中小企業化しています。それほど、旅行会社は厳しい業界ということなのでしょうか?
この中小企業かする意味を紐解いていくことで、これからの旅行業界がみえてくるかもしれません。
そもそも資本金ってなに?
資本金とは会社が事業のスタートするための運転資金のことで、株式会社であれば株式の発行によって集めた資金ということになります。企業の成長するには資本金は大きい方が事業の規模も大きく安定した会社であるという印象を与えることができます。
なぜ、資本金1億円まで圧縮して中小企業になったのか?
資本金が1億円以下の企業は税制上の仕組みだと中小企業とみなされ税負担が軽くなります。大企業と特に異なるのは大きな損失が発生した場合の欠損金と、地方税である法人事業税の扱いなどが優遇されます。
企業が赤字になり欠損金が発生した場合に最大10年間税金の支払いが免除されるほか、前年に払った税金を取り戻せる制度もあります。
資本金1億円以下の中小企業は、大企業よりも税金が優遇されるため、新型コロナウイルスの感染拡大によって旅行業は大きな打撃を受けており回復の兆しが見込めれるまではメリットが大きいと判断したと思われます。
中小企業になることで税金が優遇される8つのメリット
①法人税率が優遇される
②住民税が安い
③外形標準課税が適用されない
④税務署調査は国税局でなく税務署が担当
⑤年800万円以下の交際費枠がある
⑥30万円未満の資産は、購入後すぐに経費にできる
⑦大きな損失が発生した場合、最大10年間税金の支払いが免除される
⑧大きな損失が発生した場合、前年に払った税金を取り戻せる
もともとあった資本金23億400万円はどこにいったのか?
JTBでは23億400万もの資本金がありましたが、資本金は資本剰余金という項目に移ります。資本剰余金はその名のとおり準備金として積立するもので、中小企業になるというのは書類上の建前みたいなものです。また、資本剰余金は資本金よりは拘束力が弱いため、会社の業績が悪化した場合に資本準備金を取り崩して、欠損填補をしたりすることなどが可能です。さらにJTBは2021年度までに経費を中心に約1400億円を削減する経費構造改革への着手も明らかにしているので、新型コロナウイルスの影響で観光地に旅行者が戻るまでに出費を防ぐための手段として中小企業化したと考えられます。
資本金からみるこれからの観光業界
資本金を減らして中小企業になる方が、税制も優遇されるのであれば、逆に資本金を増資する意味はどのようなことがあるかも考えて行きたいと思います。
いわゆる増資というのは、資本金を増やしたい企業が新たに株を発行し、その株と引き換えに第三者や株主から出資を受けることです。
また、増資は株式を発行して出資を受けることなので、銀行や日本政策金融公庫などの融資と違い金利がかからず、返済の義務もありません。
返済義務のない資金があると企業に余裕が生まれ、事業拡大のため新規事業が積極的に行えるようになります。
逆に資本を減らすということは、攻める姿勢から守りの姿勢に転じたことになります。
新型コロナウイルスの影響で観光業界は厳しい状況に見舞われ、維持継続する為には様々な手段を取って行かなければなりません。何も策を講じずに感染が長期化すれば、倒産の可能性も考えられます。特に旅行業界はひとつの企業が倒産すれば、そこに食材やお土産、機材などを卸している業者などにも悪影響を及ぼしてしまいます。
今回の大手旅行会社の中小企業化は、なんとしても「生き抜く」という覚悟の現れだったのだと考えます。
2021年は東京オリンピックも控え、世界的なワクチン接種の動きが加速していくと予想されます。甚大な被害を受けている旅行業界ですが、観光の回復には時間を要するとしながらも、必ず経済回復は進行します。
様々な憶測が飛び交う中で、ネガティブなニュースに反応するのではなく、しっかりと分析や考察を行い、理解していくことが大切です。
成功事例など、希望を共有しながら観光業界が発展し、旅行をとおして人々が幸せになることを祈ります。
最新情報をお届けします
Twitter でbizchinablogをフォローしよう!
Follow @bizchinablog
コメントはこちら