さて、まずWechatによる越境支払い回数が最も多かった国・地域は、今年は香港でした。テンセント社は2016年にも同様のレポートを発表しており、昨年1位の韓国は首位陥落。おそらく政治的な課題が連休期間前に残ってしまった影響もあるのでしょう。またレポートによると、連休期間に海外に渡航したユーザーが多かった地域として広東省が最も多く、続いて上海市、北京市、福建省、浙江省、江蘇省となったようです。広東省ユーザーは香港への渡航が最も多く、これは距離的に近いというメリットに起因しているのでしょう。上海ユーザーは日本へ。そして北京ユーザーは米国への渡航が最も多く、浙江省ユーザーはイタリアに行く人が最多となりました。男女比でみると、今年は男性が53.3%と半数を超え、昨年とは逆転した形となります。
越境におけるWechatでの支払いのことを中国では微信用人民幣支払といい、中国人消費者は人民元で支払うことができ、海外のお店側は自国の通貨を得ることができます。ユーザーは渡航先の外貨に両替する必要がなく、おつりのわずらわしさからも開放されるメリットがあります。昨年1位の韓国をおさえた香港、そして現在はタイの躍進が目立ってきています。
香港でWechatによる支払いを導入している店舗の中で、港莎香化粧品店(SASA)はWechat越境支払い回数が最も多かったお店です。昨年までは一時的に本土から香港への渡航が減っていましたが、現在はまた増え始めており本土の観光客を呼び込むウリとしてWechat支払いが効果を発揮しているようです。香港に次いで、Wechat越境支払い回数が多かった国は次の通り。韓国、タイ、日本、オーストラリア、台灣、ニュージーランド、シンガポール。
タイはWechat越境支払いをする回数が最も加速している国です。今年4月に入るまで、タイのWechat越境支払い回数のピークは中国の旧正月期間でした。旧正月期間前に比べ104%の上昇。タイへ旅行に行く中国人が増えてきていることも理由のひとつにあげられます。そして4月、タイでは世界的に有名な「水かけ祭り」があり、この時期のWechat越境支払い回数の1日あたりの最大数が旧正月期間のに比べ38%の上昇を記録しました。水かけ祭り時期の前年比では6倍の成長となりました。そして、この連休期間もWechat越境支払い回数は増加し、現在バンコクの大手チェーン免税店をはじめ、チェンマイ、プーケットなどの小規模な露店でもWechatでの支払いが可能となっています。
また、日本も渡航先として人気です。連休中にWechatを使って越境支払いをすると抽選で最大888元の割引クーポンが当たるキャンペーンが行われていたのですが、初の888元満額割引クーポンを獲得したユーザーは日本への渡航者から出ました。江蘇省の泰州の男性ユーザーが4月29日に日本でWechat越境支払いを行ったところ、888元満額クーポンが発行されたとのことです。
今や中国人消費者にとって、現金なしの海外渡航はひとつのトレンドになっています。海外現地のお店もWechatで支払いができることで中国人客を呼び込むことができるきっかけになってきています。香港莎化粧品店(SASA)は、お客の70 %が中国本土からで、多くの中国本土客はWechatでの支払いに慣れています。そのためWechat支払いを導入し、Wechatでの支払いをしてくれたお客にはお得なキャンペーンへの参加権であったり割引優遇をするなどより積極的にWechat越境支払いを取り入れているようです。またタイ最大の免税店チェーンKingPowerのマーケティング部のマネージャー匡伟氏によると、Wechat支払いは昨年から導入し、ますます多くの中国人客に利用されるようになってきたとのこと。中国国内と同じレベルでのショッピング環境が整えられることで、中国人客を呼び込めると語っています。
現在、Wechat越境支払い12の国と地域で展開されており、11の通過で決済が可能となっています。中国人海外渡航者にとって現金を持たずして世界を旅する、そんなことが現実となりつつあります。テンセント社のWechat支払い機能の担当チームによると、越境に関した展開は中国人観光客の足先とともに、香港、日本、東南アジアなどの国・地域に広げていき世界を目指したいと語っています。
もはや中国人消費者をターゲットにマーケティングを考える際、Wechatによる支払い機能というのは避けて通れない道です。
※関連記事「Wechatが2016年のユーザー動向を発表。Payment機能利用も益々顕著に」(2017.6.20公開)
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